HIPHOPの意図

ではHIPHOPを一つの文化としてまとめあげた意図とはどんなものだったのか。

 “Zulu Nation 公式ホームページ”4)によると、バンバーターは「私たちがHIPHOPを作ったとき、私たちはこれがPeace(平和)Love(愛)Unity(団結)そしてHavingFun(楽しみ)となることを願い、HIPHOPによって人々がストリートにはびこる問題

(ギャングによる暴力、薬物乱用、自己嫌悪、アフリカ系とイタリア系のあいだでの抗争)

から遠ざかることができるようにと願った。そしてHIPHOPを通じて 認識、知識、知恵、理解力、自由、正義、平等、平和、愛、尊厳、統一、楽しむこととその責任、挑戦と達成、経済、数学、科学、生命、真実、事実と信頼を学ぶことができる」と述べている。ドキュメンタリー映画“The Freshest Kids”6)の中でも、「HIPHOPは人種の壁を越えたイデオロギーだ」と語っている。


さらに“Rock Steady CrewのFabel”は、『先駆者が築いた基礎を守りつつ、オリジナルなものを新たに作っていきました。HIPHOPは様々な宗教、国家、文化を持つ人々を、誰にも通じるダンス、美術、音楽、ファッションなどを使って、ひとつに結びつけてきています。「平和」はそれぞれの違いを尊重し、共通性を結合し、同意することにより達成されるもので、HIPHOPをポジティブに使った場合もそれは同様の効果があります。


(中略)


HIPHOPは我々の教育や見識を広くすることに役立っている上、自立性を高める機会をくれました。そして、若者たちに意見交換などの交流を深める方法を与えてくれ、人種が違うもの同士でもコミュニティーが図れる時代をもたらしてくれました。』と述べているように、HIPHOPによってポジティブな思考をすることにより、平和、平等はもちろんのこと、人間性の向上にも大いに役立っているのである。


 ドキュメンタリー映画“STYLE WARS”7)によると、HIPHOPが誕生してからというものの、犯罪へのエネルギーが有り余った若者だけでなく、荒れ廃れた貧しい地域(ゲットー)に住みジムや運動も習うことができない幼い子どもにとっても、唯一希望を持てるものであり家や学校での規則に縛られたストレスを発散するはけ口にもなった。


 そして犯罪へのエネルギーやストレスを発散させるには、スキル(技術)が簡単に習得できるような文化ではなく、習得が難しい、毎日の練習が不可欠な文化が必要であった。ドキュメンタリー映画“BREAKIN’ COLLECTION SPECIAL FEATURES”8)では「HIPHOPの基礎は練習である」と言われており、さらに「HIPHOPでは身に付けたスキルを競い合うバトルが大切」とも言われている。HIPHOP誕生以後、暴力の拳やナイフ、銃器を、音楽やダンス、GRAFFITIに置き換えたことで、“バトル”に勝つためスキルを習得することにエネルギーが向けられ、犯罪へのエネルギーをHIPHOPに向けることができたのである。


 しかし、若者による犯罪などの問題は現在も世界中いたるところで発生している。HIPHOPが発展した今、私たちはこの問題の解決と状況をよりよい方向にもっていくうえで大きな役割を担っていることを忘れてはならない。

群馬大学ストリートダンスサークル B-STYLE 。今年で創立20周年を迎える。現役在籍者数は総勢なんと約100名!県内外で幅広く活動している。荒牧キャンパス第二体育館にて、毎週水・日曜日19時~から全体練習を行っている。